これからの数分間、あなたの目は、あなたの身体を離れて……
この不条理なブログのスクロールの中へ───入ってゆくのです───
-------------▲▲GoogleAdsense広告▲▲-------------
この不条理なブログのスクロールの中へ───入ってゆくのです───
-------------▲▲GoogleAdsense広告▲▲-------------
あんた最近、独り言が多いわよ、と同僚の女性に注意をされた。
まずいな。どうやら僕は、いつのまにか心の中の会話を声に出して喋っていたらしい。
僕には幼い頃から“心のトモダチ”ってやつがいる。
それは現実の友人をランクづけするための表現のことじゃない。
僕の大脳皮質の中に構築された、“心の世界”に棲む友達のことだ。
困ったな。ネタが思い浮かばない。
いや、ちと違う。思い浮かぶのだが、ちゃんとした話にまとまらない。思いついてもよくある話しかないのでは意味がない。
締切が近いのに、これでは間に合わない。仕事場で使い慣れたPCを前に、私は頭をかきむしるしかない。ないない尽くしだ。
しかたなく、“いつものネタ搾り”と私が呼んでいる方法に訴えることにした。
ええと、言葉は解るんだよな?
「おお」
そうか、なら一応はコミュニケーションができるって事だ。あくまで偶然の一致だったんだと思う。いいかい、ここが肝心だ。僕らは、そうしたいと思ってやったんじゃないんだ。そこんとこを肝に銘じておいて欲しいんだ。いわば、過失…になるのかな。
22世紀も終わりの頃。人類はいまだ宇宙で孤独だった。
初の恒星間探査のための宇宙船が木星の衛星カリストの軌道上で組立を終え、ついで遠心力を利用した巨大な居住ブロックの回転テストも順調だった。
原理は原始的だが、宇宙船で安定した1Gを再現し飛行士たちが長期に渡る宇宙生活を健康に送るには不可欠なシステムだった。
そしていよいよ星の海をめざして太陽系を離れるべく、プラズマエンジンに火を点そうとしていた時のことだ。
「ねえ。あたしのこと、愛してる?」女はグラスをちりんと鳴らしながらつぶやく。
「また、それか。酔ってるな」男は、その女を膝に前抱きにしたままいつものように一緒にビデオを観ながらくつろいでいた。
「酔ってちゃ、悪いか。だってさ、責任重大だお。あたし、ひとりなんだお。もう、この世の中にさ、ニンゲンの子宮はたった一個。ね。これだけ。」と、女は自分の腹に手を当てた。
僕の彼女はちょっと変わってる。しかし、かなりの美人だ。つきあっているからといって贔屓目があると思うかも知れないけど、少なくとも普通の男なら必ず振り返るほどに美人だ。
いや、見ためもだけど、優しくて思いやりに富んでいる。だから内側から輝いて…あれがオーラってもんなんだろうな。
「そうか!答は始めからそこにあったんだ!!」
突然教授が立ち上がって叫んだ。何を閃いたのか、テーブルのコーヒーをこぼした事も分からないくらい興奮している。
「専門バカはダメだな、自分の分野以外の事はまるで猿以下だ!なんで誰もこんな簡単な事に今まで気づかなかったんだ!?」
「馬鹿!あんたなんか嫌いよっ!!」
どしゃぶりの中、彼女は部屋を飛び出して行く。「ま、待てよ!」
───あれ?こんな光景に覚えがあるぞ。いつだったか。テレビ?夢?だとしたら最低の正夢だ。
いや、今はそんな余計な事を考えてる場合じゃない。
『みなさま。共有型記憶通信チップへの切り替えはお済みですか?いまあなたの脳内でお使いの独立型チップはいよいよ本日から使えなくなります───』
主婦ふたりの玄関先での立ち話の最中、家の奥から聴こえてくるのは数年前から様々な媒体で流されている公共CMだった。
「どーゆーことよ!? 海王星って!?」
「いや、その。話さなかったのは悪かったけど…言えなくて」
「そりゃ言えないでしょうよ。帰ってくるまで5年よ、5年!放ったらかされる、あたしはどーなんのよ!!」
私はバツの悪さに頭上に眼をやる。
ごう、と音を轟かせてビルとビルの間の青空を覆い隠すように巨大な機影がかすめる。月往還の定期船だ。私は普段あれを操縦するのが仕事だ。
「うーん」
原稿をカウンターの上に置くと、編集担当は腹痛でも我慢しているみたいにひどいしかめっ面で身体を丸めてもう一度うーん、と唸った。「アイデアは面白いんだけどなあ。まあ、これはいつもだけど」
「あいたっっ!」
その日、少年は公園のバラ園で遊んでいて指にトゲを刺してしまった。
さっきまでいじっていた泥が乾いて白くこびりついた指先には、ぷくり、と血の玉が盛り上がっている。もちろん、同時に言い表しようのない独特な痛みがじくり、じくりとリズムを持って指先から全身に切なさの波が伝わってくる。
やっぱり、止めるべきだったんだ。僕の生命を賭けても。
だけどもう遅い。力も翼も持たない僕には、壁を前にしてただ泣き崩れる以外、どうしようもないのだ。
「なあ。イーリー。ほんとに行くのか」

最近のコメント