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2010年4月16日 (金)

第54幕/カミングアウト

 今夜もひたすらに忙しいだけで中身のないハードワークを終えて帰宅すると、あたしは身も心も清めて自分に還るためお風呂に入る。夕食はさっき夜食に食べたしょぼいサンドイッチやおにぎりがその代わりになってしまってる。
 たまには温かいものが欲しいけど、カップラーメンも似たような味ばっかりだし、ひと通り食べて何回かローテーションしたらもううんざり。

 
 朝まで少ししかない。でも髪が乾くと、今夜もあたしはパソコンに向かう。
 なにはさておき、一縷(いちる)の望みを賭けてメーラーを起動する。
『Over The Rainbow』の着信メロディが鳴った。やった!届いた。あの人からのメールだ。もちろん、携帯電話は持ってるけど、あえて転送サービスの設定はしていない。そりゃ、届いた時は天にも昇るほど嬉しいけど、待てど暮らせど届かない時は地獄であがいているくらいに哀しいから。それくらいなら、帰宅した時に一度だけハラハラするだけのほうがいい。
 あたしは今、恋をしている。こんなに人に恋い焦がれたことは今までなかった。
 ただし、あたしはその人と実際に逢ったことがない。ネットで知り合い、ネットで恋を育んだ。もちろん顔も姿も知らない。その人はアバターさえ使ってないから、想像すらつかない。

 リアルでしか恋をしたことのない人にはとうてい、理解できないだろう。キモイっていう人だっている。バーチャルなんか気のせいだ、って。
 でも、そんな人にあたしは言いたい。
 どうしてリアルで逢ってる人なら、自分を愛してくれているって断言できるの?と。

 彼は外国の人だ。未だにどこかは教えてくれないが、少なくともポピュラーな国ではない。初めは言葉が変だった。それどころか文字化けしまくってて、彼の書き込みを見つけた時は記号一覧を使った荒らしかと思った。
 そのうち少しずつまともな言葉に変わってきて、やがて言葉を交わすようになってから直メールのやりとりまではそれほど時間を要しなかった。
 その頃は自動翻訳ソフトを使ってると書いてきたけど、驚くほどのスピードで日本語を覚えて、頻繁にメールをやりとりする頃には不自由なく会話できるレベルになった。
「不摂生はよくない。女性は規則正しい生活しないといろいろあるんでしょう?生理不順とか」
 彼はデリカシーがないんじゃなく優しいと同時にお節介なのだ。あいにくその心配はない。あたしは子供が産めない身体だから。でも、そんなことは余計なこと。ネットを通じてだけの恋人に言うべき事ではない。
 いつも彼のメールは長文だ。あたしのことを気遣ってくれる。
 ただ、あたしも彼に隠していることが多い。勿論いつかは何もかも打ち明けたいとは思っている。でも、自信がない。顔も、容姿もなにもかも。嫌われるのが怖い。
 だが彼は近いうちに来日するという。でもどうせ仕事に追われて逢う暇なんか無い。

 その週の終わりに彼の提案でとうとうSkypeで直接、電話することになった。あたしはためらった。お世辞にも可愛い声じゃないからだ。いや、きっと幻滅する。
 あたしは電子オタクの友人からボコーダーを手に入れた。カラオケなどで声を変調するあの装置だ。これを使えばだみ声もアニメのキャラクターみたいに可愛くなる。

 そして当日。

 結局週末も仕事を終えた時には日付が変わっていたが、やっと帰れる。事務所に鍵を掛け、ふと見上げると澄み切った深夜の空に、大きな流れ星が横切った。
 あ!お願いしなきゃ、と思い出す時間があるほど長い間尾を引いて流れた。逢いたい。けどどうか彼とは逢わずに済みますように…

「今晩ワ。コエデハナスノワ、ハジメテダネ。ハジメマシテ。キコエマスカ?」
 少し鼻にかかったような声。でも、想像していたよりもいい声だと思った。「聴こえる。聴こえるわ。とうとう、直接お話できたのね。」あたしも鼻声になっていた。ボコーダーのせいではない。
「ハツオンワ…ヘンジャナイカイ」「ちゃんと聴き取れるわ」
「アイタイ。アイシテル。モウ、近クニ来テルンダ」あたしは腰を抜かした。声でさえ嘘をついているのに、逢うなんて無理。いつかはそうなってほしいと願っていた。いつかは、彼と手を取り合って出掛けたり、お酒でも飲みながら一晩中でもくだらない話をしていたい。
 もちろん、できることならその腕に抱かれて、愛されて───

 でもそれは許されない。逢うのなら、カミングアウトしなければならない。だが彼は気づいていたのだ。知っていてそう言ってくれていたのだ。あたしは涙が止まらなかった。
「あたしは、男なんだよ。それでもいいの?」
「キニシナイヨ。ボクノ星ニワ、最初カラセイベツナンカナイ」
 部屋の前がまばゆい光に包まれた。


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───おわり───


コメント

お久しぶりです。

実は、僕のイニシャルはE.Tです。
宇宙から来ました。
最新の記事にそのことを書いています。
よければどうぞ。

性別のない世界、ですか。
どうだろう?
僕は、カワイイ異性がいた方がやっぱりいいけど。

バーチャルでない方が、結構嘘は多いかも。
ネットでは、結構恥ずかしげもなく本当のことを書いてる気がします。

  どちらも本当の自分だと思う・はげおやじ・より

はげおやじさん!申し訳ない!
まさかコメント戴いてるとは……。週イチ更新しなくなって、いまやこのブログ、えんえんと低迷してるもので、皆目チェックしてませんでした。

どうかお許しを……(つД`);;

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