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2010年4月30日 (金)

第56幕/関係者からひとこと

 男が得体の知れない夢にうなされて眼が覚めると、まだあたりは真っ暗だった。
 しん、と静まりかえった独特の吸音感に、今が真夜中だということだけは解る。
 おやすみタイマーをセットしたはずのテレビは、なぜか画面の端に“ビデオ1”と緑色で表示したまま、ときどき不規則にゆらめく黒い画面をえんえんと映し出している。
 

 宿酔いだ。何時だろうかと枕元を探るが携帯電話がない。腕を延ばすと、何かきゃしゃなものを思い切り跳ね飛ばしてしまった。左の壁にがしゃっとぶつかる音で眼鏡だと知れる。
「くそ。ツイてない。」
 画面でちらつく“ビデオ1”の文字の光のおかげで真っ暗闇ではないが、部屋にあるものの輪郭だけがおぼろげに浮き上がるのはかえって不気味なだけだ。
 かといって灯りを点けようとも思わない。
 もう一度眠らないと仕事に差し支える。いま下手に灯りを点けたら身体にけだるさが残ったまま目が醒めてしまうからだ。

「ツイてない」が男の口癖だった。ことあるたびにそう愚痴る彼に、同僚の女は「ツイてないと思うから、ツキが来ないのよ」と諭した。

 だいたい、今こんなことをしている事自体がツイてないからだ、と思った。
 昨日の部下のミスもそうだった。ありえない内容だった。しかも、後で見れば判りすぎるほどに明白なその間違いを、スタッフの誰一人として気づく者が居なかった。
 それどころか、本当にどうでもいい箇所には得意先から何度も何度も訂正や変更が入った。いや、それに気を取られて誰も肝心の所に意識が行かなかったのだ。

 元々の原因がどちらにあるにせよ、たちの良くない得意先を接待でなだめ、さんざん絡まれた挙げ句に泥酔の始末をさせられ──。それでもペナルティは科されるだろう。たった、たった一箇所のつまらないミスひとつのせいで。
「畜生。人間ひとりが持ってる一生分の運はおんなじだ、なんて言うが大嘘だ。俺にはこれっぽっちも巡ってこないじゃないか。もしそれがホントなら、大成功した人はとんでもない悪運にも見舞われてないといけないはずなのに…」

「いや、それはちゃうでぇ」

「げっ。だ、誰だ」
「あ、しもた。つい声、かけてしもた」
「…ど…ろぼ…う…か?」
「ちゃうちゃう。そんな人間の商売とは違ゃいま。」
 声は部屋全体から聞こえてきたが、男はなんとなくテレビのある方向を見て息を呑んだ。ゆらめく画像の中に、得体の知れない何かがいる。「……!」
「まあ、なんと思てくれはってもよろしいけどな。せっかくやから関係者として言わせて貰お。人の運の分量はみんな、同じや。」
「うそだ」
「あんた、知らんだけや。ゆうたろか?気の持ち様やねんで」
「?」「不幸ちうのは、人それぞれやねん。あんたがツイてないて思うことも、人によってはラッキー♪て思うんやで」
「ばかな」
「なんでやねん。あんたは失敗がもとで上から怒られるわ、嫌な奴の接待させられるわ、損ばっかりや思てるやろ。けど逆に、会社のカネで酒飲めて、ミスした部下からは感謝される。あいつ、恩に着て一生あんたについてくるで。それにお得意さん。あんたにシモの世話までさせた事、めっちゃめちゃ後悔しとるぞ」
「よくそんなデタラメ…って、なんでそれを知ってるんだ」
「せやから関係者やゆうてるやん。ええか、運の量はいっしょ。けど、不運の価値観は人それぞれや。たとえばやな、同僚のねぇちゃん。あの娘があんたに気ぃあること、ラッキーて思てるやろ」

「げっ」
「あのねぇちゃんはええ娘や。けど、火遊びの相手としたら最悪やで」
「な…なんでだ」
「ああ見えてむっちゃ情が深いんや。浮気でもしようモンなら、あんたは殺される運命を選ぶ事になる。しかし真面目な亭主でおるんやったら尽くしてくれる最高の嫁はんになる。」
「俺は浮気症じゃない」
「つまり真面目なあんたにとってはラッキーやけど、あんたが遊び人やったら最悪の女になるっちうワケや」
「説明になってない」
「頑固やな。わいに会うた事はツイてるかツイてないか?」
「そんな事、分かるもんか」
「そやろ?どっちに転ぶか、受け取り方と使い方次第や…まあ…たしかに幸運の一括払いと月賦はあるわなあ。しゃあない、出血大サービスで教えたろ。たられば、や」
「は?」
「例の得意先、いきなり吐いたから急いで店出たやん。あとでニュース、見ときや」
「…どういうことだ」
「あのあと、店に何があったか。朝刊には間に合わんかったけどな。あのな、命があるだけもうけもん、いうやろ。けどな、生きてるからゆうてラッキーかどうかもまた、分からへんねんでぇ」
 男は総毛だった。画面の中のそれが笑った顔のおぞましさもだが、自分のもうひとつの運命も想像できたからだ。


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───おわり───


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