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2010年6月 7日 (月)

第57幕/冬虫夏草

 アパートの外では、昨夜からの小ぬか雨がまだ降り続いている。
 まだ、梅雨入りではない筈だが、ひどい蒸し暑さだ。2Kの狭苦しい都会の古アパートに刑事1人鑑識3人、ホトケさんも入れると5人も詰め込まれてるものだから、たまったものではない。
 一応エアコンは設置されているが、商売柄それを点けるわけにもいかない。
 俺たちの仕事は、被害者や加害者が残した証拠をうぶ毛一本、ホコリひと粒といえども逃さず見つけ出すこと。事件の動機や理由はどうでもいい。ひたすら死因と経過を究明する事だ。
 

「あ、痛っっ。」
 俺の背後で四つん這いで遺留品捜しをしている後輩がいきなり立ち上がった。
「こら新米!デブがいきなり立ち上がるな。大事な証拠が吹っ飛んじまうだろうが!」
「す、すんません。なんか眼に入ったんで…つつつ」
「ち。しょうがねえな」
「そ、外で取ってきます。ああ。なんだろ。マジで痛い、痛い」
「あああ。ドスドス動くな、そっと。そっと出てけ、そっと。現場荒らすんじゃねえぞ」

 しかしもちろん現場に到着した時われわれを迎えてくれるのはたいていの場合、無残な姿のホトケさんである。
 凶器が突き立ったままのもの、ひどく変形してしまっているもの、何日も経って生ゴミ以外のなにものでもないもの───そう、死んじまったらもう『もの』になっちまうんだ。
 五体が揃ってるのはまだいい。
 やりきれないのはバラバラにされたものだ。あれは最たる『もの』だ。

 さいわい、今日のホトケさんは五体が揃っている。しかし異常な部類には違いなかった。
 最初、部屋に入った時にわれわれが眼にしたものは、フローリングの上にシーツを敷いてその上にあおむけに死んでいるティーンみたいに派手な服装の老婆だった。
 だが、すぐにそれが老婆ではなく死んで日数が経ち、完全にひからびてミイラ化している娘の死体だと知れた。検屍解剖するまでは断定できないが、いったいいつからこの死体は放置されていたのか。
「よ…米崎さん。これ…なんですか」所轄署の若い刑事が這いつくばるようにして覗き込んでいたのは、最初シーツに見えた死体と床のあいだにびっしりと詰まっている白い綿のようなものだった。
「おい!汗落とすヤツがあるか。DNA鑑定がややこしくなるじゃ……あ!カビだ。カビの菌糸だぜ、これ。ほら、チーズにあるアレだ」
 これは動かすとマズいか?床板ごと持ってくしかないのか?

 同僚の牧原が台所から「先輩。こっちも」と俺を呼んだ。「ヘンですよ。ほら、三角コーナーに果物の生ゴミが。」なるほど、たしかに、ヘンだ。
「え?…どこが変なんですか」と刑事。
「考えろよ。ホトケさんはカリカリに乾くまで古びちまってるんだぜ?なのになんでここに生のゴミがあるんだ?誰だよ、これを棄てたのは」
「あっ。な、なるほど。じゃ、じゃあ犯人はガイシャを殺ってからずっとここに」
「死体がミイラになるまで居たってか?ずいぶん気の長いヤツだな」
「わああっ」
「なんだ。いちいち。」「う、動いた、み、ミイラが」
 お前刑事に向いてないよと言いかけたその時。たしかにミイラの身体がゆらり、と全身が揺れた。
「げ」見ると、隙間から無数の白いものがゆっくりと、だが確実に伸びてくる。それがミイラを押し上げているのだ。
「き…キノコ!?」
 キノコが伸びてくる。まるでドキュメンタリー番組の微速度撮影を観ているようだった。「牧原、どう思う、これ」
「わ…かりませんが、ヤバイでしょ、ここにいると」
「同感だ。おい、一旦撤収だ」と刑事を振り返ったが、すでに彼の顔はカビで真っ白だった。しかも見る見る、そのカビは頭を、そして首を覆って汗で濡れたシャツの中へ入っていく。最初はもがいていた刑事も、へなへなとその場へくずおれた。
「げ…!」
「ダメだ先輩。間に合わない」俺と牧原はとにかくドアの外へ出た。
「───おい。新人はどこ行ったんだ」
「誰です?」
「新米だよ、なんか眼に入ったって言って出たきりだ」

 実は彼はドアのすぐ外に座っていたのだが、すぐに判らなかった。白いベールに包まれていただけでなく、水分を失って驚くほどダイエットしていたからだ。開いたままの口からはエノキダケのようなものがいっせいに上を向いて伸び出していた。
 誰もが不用意だったが仕方ない。俺たちは対細菌テロ特殊部隊なんかじゃない。服装だって作業着に毛の生えたようなもんだし、マスクも自分の唾液などの飛散を防ぐためで、事件現場にある“なにか”から身を護るためではないのだから。

 だが何故こんな変なカビが?いや、そんなことはどうでもいい。俺たちの仕事はあくまで死因と経過の究明であって、理由探しじゃない。しかしできる事ならなんでこんな因果な商売を選んだんだと、決断を下した当時の自分に会って殴ってやりたかった。


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───おわり───


コメント

激久でございます。
孫の誕生やら、新規事業の立ち上げやらでこちらにゆっくりとお邪魔する時間もなく失礼いたしておりました。
また楽しみに読ませていただきますね。
冬虫夏草…ゾクゾクしたけれど面白かったですわぁ。
ぼちぼちバックナンバーも読んでいきます。
またよろしくお願いいたします。

わあ!かわせみさん、いらっしゃいませ!!
もう、お越し願えないのかと思ってました。…が、お孫さん!?
ひょえー、おめでとうございます!かわせみさん、称号がひとつ増えられたんですねー。

面白かったですか!嬉しいお言葉、いたみいります!(ノ_<。)
色々あったこの半年、いま褒められたりすると泣きます。

もう週イチ更新してませんので、なっかなか増えませんが止めるつもりはさらっさらありませんので、思い出してくださった時はフラッと立ち寄ってくださいませ。

ありがとうございました。(T_T)/

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