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2010年8月 2日 (月)

第58幕/千年の記憶

「植物には、常に微弱な電流が流れています。」
 教授は白衣のポケットに手を突っ込んだまま、記者たちの方へくるり、と向き直った。
「ほう。それが今回の研究の成果ですか」メモを取りながら一人の記者が顔も上げずに質問した。
 話の腰を折られた教授はムッとしたが、マスコミは敵に回すなという学長の言葉を思いだした。

「そう結論を急がずに。会見は始まったばかりですよ。…いいですか、植物には、微弱な電流が流れている。でもその事はずいぶん昔から知られている事なんです。ただし、その電流が植物にとってどんな役割なのかは永らく解らなかった」
 


「…役割、ですか」
 記者はメモから顔を上げた。教授は食いつきを確認した。
「そう、役割。人間にも電流が流れている事は知られています。脳波とか…え?あ、それはご存じでしたか、失礼。そこで私は、植物の電流にもそうした《意味》があるのでは、と考えたのです」

「…意味、ですか」
「どうもあなたはオウム返しにする癖がおありだな。よろしい、細かく説明して差し上げよう」つかつかと教授は使い古された黒板に歩み寄ると、二重式のカラクリをがらがらと動かし、何も書かれていなかったほうを降ろす。
 カン、とチョークの先端を叩きつけると、講釈を始めた。
 同時に他の記者たちは余計な事を言った記者を一斉にこづいていた。

 講釈は生徒に向かうような調子で、えんえん一時限二時間弱にわたって続いた。
「結論。その電流が意味を持ったものだとしたら?もし意志や思考があると仮定した場合、その電流のパターンを読み取って解読できれば、なんらかのメッセージを受け取る事はできないか、と思ったのです」

「メッセージ!? 植物の!?」今度は別の記者だった。居眠りしかけていた彼らもこの特ダネに飛び起きた。
「そう、植物からのメッセージ。──ご心配なく、オツムはいたってマトモです。…もちろんね、彼らのメッセージが人間や動物のそれと同じだなんて都合の良い解釈はしてません。しかし、電流に不規則な波や、逆に規則的なパターンがあるのなら、たとえ言葉でなくても何か我々の認識できるカタチに変換できれば意味のある事が見つけられるんじゃないか、という考えに至ったんですよ」

 講義の間は眠気と戦うのに必死だったが、今は各人がせっせとメモ取りに必死だった。

「彼らの相互コミュニケーションの有無はまだ未確認ですが、もっとすごい事が解ってきました。植物にも記憶がある事が。」
 さっきの睡魔はどこへやら、記者たちは教授のセンセーショナルな発言の数々に我先にと身を乗り出していた。
「本来は植物の言語解析のためのプログラムですが、言語の代わりに画像が得られたのです。ぼんやりとしたものですが、これまでの実験から植物も周りの空間を意識していることが解った。しかもこれは今の画像じゃない。つまり植物の記憶を映像化する事に成功したんです」──と、記者たちに示したパソコンの画面には、モノクロフィルムに魚眼レンズで撮ったすりガラス越しの風景を、さらに涙眼の薄目で無理に観た時みたいな捉え所のない画像が表示されていた。
 例の記者が、おずおずと手を挙げる。
「…あの。また叱られそうですが…いま、植物の記憶と仰いました?」

「これは、そこの中庭の桜の苗木から得られた画像です。さあここに注目」と指さした部分には、ぼんやりとした影があった。「時間経過を早めましょう。横にある数字は時間と日付です」動画にすると影はゆらゆらしつつ消えたり出たりした。
「お分かりですか?これは、この苗木を世話している学生の姿を認識した影なんです」
 おお、と記者たちの中から声が上がった。
「信じられないでしょうが、これで植物には視覚がない代わりに全身のレーダーで感じとってて、しかもちゃんと上を観ている事が判る…でもこれは試作段階。次がこれ」
 やはり不鮮明なモノクロ画像には違いないが、ピンホールカメラ程度の解像度になっている。ぼんやりだが、たしかに農場を囲む学校の校舎の風景らしい。

「そしてこちらが最新の処理装置でそこの神社の千年杉から得たデータです!これなら数百年、数千年生きてきた樹木の記憶をも画像イメージとして描き出す事ができるのです。しかもこのバージョンではカラー化に成功しました。まさに歴史の証人が観た映像です。実はこれが初公開。皆さんと感動を分け合いたいと思って、私もまだ観ていないのです。さあ、ご覧ください。」
 記者たちが一斉に顔を曇らせた。
「……うっ?」
 画面は真っ青だった。しかも、いつまで経っても、画面には何も映らず、何一つ動くものはない。教授も負けずに青くなった。

 実はそれが千年杉の記憶だった。
 天へ天へと枝を伸ばした若き苗の頃。どこまでも澄み切った、遥かに拡がる懐かしい大昔の青空の光景だったのだ。


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───おわり───


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