▼愉しい科学の本▼

▼気になるアイテム?

▼オススメ情報2▼

一番オモロイポイントサイト

  • とにかく何やってもポイントが貯まる気前の良さは業界一!しかもゲームがめっちゃ楽しい、オモロイ。仕事中のうさ晴らしに最適でっせ♪



« 第61幕/遙かなる邂逅 | メイン | 第63幕/希望のメッセージ »

2011年1月17日 (月)

第62幕/猫とにらめっこ

 春に向けて庭仕事をしていた時のことだ。
 しゃがみ込んで…というよりは、うずくまるようにして球根を植えるために植木鉢を抱いて作業していたら、ふと視線を感じた。

 
 反射的に顔を上げると、私の鼻先に目玉の付いた毛だらけの黒い丸が。
 そして一呼吸かかって初めてそれが黒猫の顔だと脳が判断するなり、私はわっ、と驚いて尻餅をついた。
 猫がうちの庭に居ることは不思議ではない。以前からうちの庭には猫が何匹も、いや、何種類も出没するのである。

 だが黒猫なんか、初めてだ。

 三毛、白、まだらな毛色、毛の長いの短いの。細いの、デブいの…いつもの連中は、いくら必死に物を投げ付けても、球技に無縁な私では到底届かない絶妙な距離を保ちつつ、スローモーションのように悠々と庭の隅の方を横切ってゆくのである。それも、まるで人を小馬鹿にするような一瞥をくれながら。

 ただ庭を通るだけなら看過するが、私が居ない時には“置き土産”を残してゆく。いつまでも消えない、ひどくてしつこい悪臭を放ち、強い塩分と酸で植物をダメにしてしまうアレだ。
 もちろんそれだけではない。わざとやってるのではないかと思うくらい、植木を次々とひっくり返して行くのだ。それもか弱くて大切な植木ほど見事に何度も、何度も。
 それが元で枯れた花々や木々がどれ程あるか。

 去年の事だ。大切な人を失った。私は独りになった。
 この庭はその大切な人が永年慈しんだ大切な場所だ。それを穢す猫が許せない。それだけだ。
 猫という動物種自体に好悪はないが、そんな理由から私は猫が好きになれない。それどころか、個体としてのババタレ猫への怨みは骨髄に達していた。

 いや、それだけではない。都会のガーデナーにとって猫は、野良と飼いの区別なく駆逐すべき最悪の害獣である。

 だがその、初めての黒猫は、私の声や様子に驚きもせずに黄色い目でただじっと私を見つめているではないか。
 猫の目。魔物を描くとき必ずと言っていいほどモチーフに選ばれる、縦に切れ込んだ光彩が薄気味の悪い、妖(あやかし)の目。
 いったいこいつはなんだってこんな至近距離で私を睨みつけているのだろう?…いや、睨んでいるわけじゃない。威嚇してる様子ではない。だがさりとて、甘えて来そうな雰囲気でもない。ただひたすら、その好奇心を充たそうとして私を見つめている、という感じだ。

 こんな奴は初めてだ。最初薄気味悪かったが、こうなればこちらも見返さないと気分が悪い。
 初めてと言えば猫の口。意外な事に、ものすごく薄いなりにも、ちゃんと唇があることを初めて知って感心した。
 映画やアニメではよく猫が喋るシチュエーションが出てくるが、犬や猫は唇が動かないのでちゃんと発音ができない、などとSFか何かで読んだ本にあった。
 しかしそれなら腹話術師はどうなんだろうか。

 耳。これも“ネコミミ”とかでネタに取り上げられるけど、こうして見る限り耳は耳だ。というか、ちゃんと人間の耳があるのに、さらに別の耳が頭の上に生えているなんて、四つ目のある怪物とどこが違うのか誰か納得の行く説明をしてもらいたいものだ。

 …などと、くだらない“独り連想ゲーム”に興じていたが、よくよく考えれば、こんなに猫の顔などをつぶさに観察したことなど生まれて初めてだった。
 あ。───観察!こいつも私を観察しているのか?だが何のために?
 そいつはニャアと鳴くでなし、擦り寄っても来ない。ただ、覗き込むように私を見つめているだけだ。

 防獣ネットや見るからに凶悪な印象の棘だらけのイバラ、連中が嫌うというハーブなどを多数植え、忌避効果のある薬剤を撒くることで、なんとか庭の中心部への侵入だけは防いでいた。

 …まてよ。それなら、こいつは一体何処から入って来てるんだろう?

 庭から出てゆく所を確かめようと根比べをしていたが、そいつは置物みたいにじっと同じ姿勢のまま動こうとしない。
 手を出せば何か反応が得られるのかも知れないが、私自身、気味の悪い猫など触りたくもない。だが不思議な事にほんの一瞬、私が目を放した隙に空気のように消えていた。

 それからそいつは私が庭仕事をする度にやってきた。
 例によって、やって来るところも去るところも見ていない。いつの間にか居て、いつの間にか消えている。
 いつしかその妙な猫とのにらめっこを楽しみにするようになっていた。そしてあれほど辛かった大切な人を失った哀しみが薄れていることに気づいた。感謝すべきなんだろうな───。

「まあ。綺麗な庭ねえ…あら、あの猫はあんなとこで何をじっと見てるのかしら」
「うわやだ…ここの家よ。先月旦那さんが衰弱死してるのが見つかったのは」

-----------------------------------------------------------------
───おわり───

コメント

日本ブログ村のトラコミュから来ました。ねこって非常に薄い唇があるんですよね。:)
楽しみましたので、ポチしときました。

SouthernCross010101さん、はじめまして!
楽しめて何よりです。不定期ですが、また描いたらTwitterなどで告知しますので、今後ともよろしうに。

コメントを投稿

いらっしゃいませ。
亜茶事及楽
(あさじ きゅうらく)です。

  • あなたは09年1月の当劇場開館以来…
    番目の

    ありがた〜いお客様です。


フォトアルバム

支配人ごあいさつ

  • 当劇場はブログ形式で第一幕から順に並べてはありますが、作者の気まぐれにより適宜改訂・追記等いたしますので公開日付等に意味はありません。
    したがって何時いかなる幕数の話でもコメントをありがたく頂戴いたします。お気軽に話しかけてやってください。
    掲載作品の二次使用も大歓迎。これを原作にどんどん話を膨らませてください。ただし必ずご連絡と原案者名・原題の記載をお願いします。

    ご連絡は該当作品のコメント欄まで。


    2000字劇場支配人:拝

2000字劇場&

さいえなじっく

更新告知Twitter

  • さいえなじっくの主人公、夕美がしゃべってます。ふぉろーみー♪


    2000calTwitterBN

こんてんつ、色々。

  • ▼TOMZONE-S SHOWハブブログ▼

    BuratabiBun.gif

    ▼ひと味ちがう京都堪能ガイド▼

    BuratabiBun.gif

    ▼これぞ元祖中の元祖!!▼

    SengokuBusyoBN.gif

    ▼一筆おひねりエッセー▼

    HokotateBN.gif

    ▼TOM娘のTop絵これくしょん▼

    FetakeBN.jpg

他にこんなブログ

やっておりマス。▼

  • ▼作者の日常をブツクサと。





    ▼絶対ネタバレなし!の映画解説





    ▼のんびり更新*連載型SFコメディ

ランキング参加中。

  • 基本的に作品以外の記事はありません。作者の日々のウダ話はこの柱の上の方にある『ブツクサ徒然ぐさ』のRSSボードからどうぞ

    コメントへのお返事がライナーノート代わりですので、お気軽に言葉をかけてください。

    まあ楽しめた、と思われたらぜひ

    ▼▼▼クリックお願いします。創作の励みになりますので…。

    にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ

    にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ

    にほんブログ村 小説ブログへ



    ランキング下がってるので

    ▼ここんとこ特にヨロシク


    小説・詩ランキング

Powered by Six Apart
Member since 09/2008

お世話になってます♪