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2011年1月25日 (火)

第63幕/希望のメッセージ

 夜空を焦がす夏の花火…なんて叙情的な表現があるが、今まさに俺の頭上の空は異様な色の焔で焦げっぱなしだ。
 だが幼い頃から映画やドキュメンタリーで何度も見ていたからだろうか、妙なことにその光景には懐かしささえ感じる。勿論、その頃我が国は頭が呆けるほどに平和で、テレビを点けても、お座なりなドラマや無意味な情報もの、そしてくだらないお笑い番組ばかりの時代だった。
 それ以外だとつまらない政治屋同士の討論番組か、聞いた事のない名前の国同士の戦争や、“もしも”の危機を伝えようと作られたドキュメンタリー番組があった。で、俺はけっこうそんなのが好きだった。

 しかし作り物の映像になれた我々にとって、皮肉な事に映像がリアルであればリアルであるほど、まったく実感を伴わなかった。実写でもCGでもその印象は変わらない。所詮ドキュメンタリーなんて野次馬の“物見高い観客的”な視点でしかないのだから。
 逆に、専門家と名乗る軍事ヲタクの詳細な解説のせいで、武器の種類やスペックは英単語より覚えている。

 ほら、今、もうもうとした水蒸気と共に上がって言った奴。米軍払い下げのLGM-118A ピースキーパーだ。
 なんて皮肉な名前の大陸間弾道ミサイルだろうか。だが我が軍にはもうあんな古いのしか残ってない。しかし相手の防空システムもすでに死んでいるからボロでも墜とされはしない。
 すうっと光の尾を引いて、焦げた夜空に針が刺さるように吸い込まれた。…違った、夜空じゃない。今はまだ午後二時頃の筈だ、垂れ込める放射能含みの黒雲のせいで真っ暗闇だが。…そのかわり、燃え盛る地上の焔が紅く雲に陰影をつけている。

 もうどれだけの人間が死んだのか、どれだけの街が灰になったのか誰にも判らない。
 そもそも、俺自身がとうに人間でなくなってるのだ。
 ただし、こうして物事を考えたり皮肉ったりするだけの脳と意識は残っている。もっとも、残っているのも脳と意識だけだ。それも一体、どこにどう残っているのかは自分ではよく判らない。
 最後に憶えているのは、裸の背中にちょっと冷たくて違和感だらけの固いベッドの感触、そしてちくりと刺された注射針のわずかな痛み、自分を覗き込む数人の医者の目。そしてその光景もじきにフェードアウトした。

 それからはずっと今のように目をつむったまま、起きようかどうしようか迷ってる日曜日の午後のような感覚で今に至っている。ただ、外の景色は見える。いや、見えると言うより判ると言った方がいい。
 さっきのミサイルもいろんな角度から同時に見えた。近くから、遠くから。だが以前は地上から上がってきてどこへ着弾するのかまで宇宙の目を通して見届けたものだ。その頃は世界中の街や田舎の光景も観る事ができた。
 今はもうミサイルの周辺だけでなく、すでに人の姿、いや動くものすら見かけなくなって久しい。

 ひどい空だが、俺は案外、ミサイルたちがあの黒雲をつきやぶって翔んで行く光景が気に入っている。俺にとっては、ボロだろうがお下がりだろうが、あいつらが自由の象徴のような気がしてならないからだ。
 実は失われた視点は宇宙からだけではなく、地上もどんどん視野が狭くなっている。もう遠からず何も観られなくなるだろう。

 ああ。また視野が狭くなった。どうやらさっき打ち上げたミサイルのサイロ近くに敵のヤツが着弾したらしい。
 良かった。今度こそゆっくり休めるんじゃないだろうか。
 思えば最初がマズッた。セオリー通りまず敵の耳目を封じたために、連中の放つミサイルはほとんどが叩くべき軍事施設を叩けずに、無関係な都市部ばかりを誤爆した。
 しかも生き残ったのは軍人、つまり戦争バカばかりになって戦争は終わらなくなった。
 俺はとっくに戦意を失ってたが、システムに必要なのは俺の反射神経と計算的な部分であり、残留物に過ぎない感情や意思は関与できずに受けた攻撃には反射的にやりかえした。

 自殺しようにも自由になる手足もなく、殺して貰おうにも誰もいない。最後の希望である敵は俺の存在も位置も掴めないでくのぼうだ。
 だからひたすら俺は核ミサイルでメッセージを送り続けたよ。何年も何年も。
 それがやっと通じたようだ。
 まあ俺自身、俺がどこに居るのか判ってなかったから同じくでくのぼうだが、さっき受けた攻撃の被害具合でやっと判った。なんのことはない、俺はずっと故郷の地下基地に居たんだな。

 生まれ変われたら、今度は軍から逃げてでも平和に暮らす。

 生まれ変われたら、どんな動物でもいいや。殺し合いさえなければ…ダメだ。生存競争がある以上、それは無理か。

 生まれ変われたら…か。ひとつ心配なのは、生まれ変わろうにもこの星にはもう一切の生命は居ないんじゃないか、という事だ。
 とりあえず、休みたいな。ゆっくりと。


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───おわり───

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