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2011年2月18日 (金)

第64幕/心音

「うーん、すみません」店員はろくに調べもせずに即答した。「お客様ご希望のモデルはもう生産を終了してだいぶ経っておりましてね。メーカーにまだ交換部品がストックされているかどうかは探してみないと。…それよりいかがです、最新型の方がむしろお値段もぐっとお得ですよ。超音波コアレスモーターで音もしませんし」
 私は耳を疑った。「音がしない!? おい待てよ、心臓だぞ!?」

「ええ。心臓といえど役目はポンプです。だからって無理に収縮式にこだわる必要はないのです。体液さえスムーズに効率よく流せれば」
 そういうと係の男はカウンターの下から半透明の薄い板を出して来た。板にはすでに最新型の人工心臓のカタログが映し出されてて、その上の宙には、くっきりとそいつの立体画像が浮かんでいたが、形といいピンクの色といい、どう見ても両端を金具で留めた太めのソーセージそのものだった。
 その板自体がこの前出たばかりの新型のピクチャーボードだ。従来と異なり、電源を必要としないのが売りだ。そしてそいつは、私の勤め先の新商品で、おまけに私が率いるチームの研究成果でもある。

「…血液はつねに滑らかに流れ、流量だけが必要に応じて変化するんです。ですから身体への負担が少なく、未交換のパーツにも優しいってわけで」
「パーツ?」
「あ、失礼、ようするに筋肉や骨や、交換前の生身の臓器の事です」
「ああ。そんなのは嫌だ。同じのを探してくれ。でなければ似たのを。それも無ければジャンクでもいい。ちゃんとドックンドックン音がして脈打つ心臓をくれ」

 そうですか…、と店員は残念そうに引き下がった。見つかったら感応メールで連絡しますので、市民IDのスキャンを…と言ったので、私は「電話してこい、ちゃんと耳に音で聴こえるアレで、だ」と大時代な紙の名刺をくれてやった。
 感応メールとは昔のSFで言うところのテレパシーを使った通信だが、私の体質には合わない様で、受信するたびにめまいと吐き気がするのだ。
「音がしないなんて、設計してる奴は何を考えてるんだろう。なあ、そう思わないか」と俺は飯のついでに店に付き合わせた若い同僚に話し掛けた。

「いいじゃないですか音くらい」
「そうはいくか。気分の問題だ。心臓だぞ。音がしなかったら落ち着かんよ。生きてるのか死んでるのかわからんじゃないか」

「そうですか?僕のは以前から無音のやつですよ。そりゃ夜寝る時とかシーンとしてる時はシューって血管を流れる血の音くらいは聞こえますけどね、でも無理して走った後でもあのバクバクして今にも死にそう、って苦しさもありませんからね」

「新人類だなあ。俺はそんなの気持ち悪いよ。」
「なんです、その新人類ってのは」
「知らないのか。そうか、俺がまだ子供だった頃…そう、まだ人類が紙を使って自然を食いつぶしていた頃だ。俺の上の世代の連中のことをマスコミがそんなふうに呼んでたんだよ。もう、何世紀も前の話だ」
「ほう。じゃ僕はその新人類的な要素が濃いってことなんですか?」
「まあね」
「あまり良い意味じゃなさそうですが?」
「ははは、そんなに悪くもないよ。当時の連中はそう呼ばれることを結構気に入ってたようだし」

「ふうん。あ、そうだ…さっき部長から感応メールがあって。今夜の接待はキャンセルだと」
「助かった…この心臓じゃいつ止まるか知れたもんじゃないからな」
「大丈夫ですか、あいつ、あの調子じゃ部品探す気なんかないですよ」
「かもな。でもそれも良いかな、とか思うんだ、この頃は。もう生に未練はないよ」

「ぜいたく言わないでくださいよ!」突然彼は叫び、そして珍しく彼は怒っていた。「もう死んでもいい、なんて言う奴はとっとと義体の所有権を首を長くして待ってる人に譲って脳を生ゴミに出せばいいんですよ!」
 私は面食らった。こんな彼を見たのはここ20年で初めてだった。彼は常に冷静で、あまり感情を出さないのは義体率の高さばかりではない。
「ああ…すみません、口が過ぎました…あなたも好きで200年も同じ会社で働いておられるわけじゃないですものね───お許しを」
 申し訳なさそうに2mちかくもある高い背を何度も折るようにして謝りながら、淋しそうにこう、つけくわえた。

「僕にしてみれば、味気なかろうがデリケートさに欠けようが、自由に動けて喋られて、誰の助けもなしに一人でなんでも出来るこの身体は宝物ですよ…失礼します」
 彼の後ろ姿を見送りながら私はしまった、と自分の迂闊さに舌打ちした。そうだった、あいつは私みたいに身体が古びたから脳を残して義体になったんじゃなく、最初から生まれ持った身体が使えなかったから義体に脳を載っけたクチだったんだ…

 私はちゃんと謝りたくて彼の後を追って走った。なに、古くてもまだこの心臓は使える。ぜいたく言ってちゃダメだ。

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───おわり───

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