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2011年9月 7日 (水)

第65幕/ウエイト・レス

 約束の時間よりだいぶ早く待ち合わせ場所に着いてしまった。

 暇だ。

 携帯電話のゲームはどれもクソゲーだ。やり始めた途端にもう虚しくなる。
 まだこれなら梱包材のプチプチでも潰している方が悟りでも開けるのではないか。

 他のサラリーマンや学生のように、移動中やサボりの最中にまで必死にメールチェックしなければならないほど友達や得意先もない。
 コーヒーは嫌いだし紅茶も熱いうちに飲んでしまう俺は、喫茶店に入っても10分と間が保たない。やっぱりゲームしかないか…と携帯用のサイトに入った時、その文字だけのバナー広告が目に入った。

《お暇ですか?あなたのお時間、高く買います。》

「はあ?」思わず独り言を漏らした。なにかの印象広告だろうか。それにしてはダサすぎる。デザインさえされていない。
 それ以前に、どうやって時間を買い取ろうというんだ?それだけでも嘘臭いのに、今時珍しく連絡先には電話番号が書かれている。
 どうせ本当にヒマなのだ。真偽はともかくも、相手がどんな屁理屈を唱えるのか確かめたくなって、番号を打ち込んだ。

 コールが鳴るか鳴らないかでほどなくアニメで美人役を演じる声優のようにしっとりとした魅力的な声の女性が出た。
 手続きも簡単で、電話を切った後に携帯に送られてきたフォームに入力・送信して完了、細かな条件を別とすれば契約文はたった一行。
《甲は人生に起こる事象に於いて、単に待機するだけに費やされる余剰時間を、以下の条件にて乙に売却するものである》

 あまりにお粗末で、たとえ新手の詐欺だとしても指定した口座は空でクレジット引き出し設定はしてないから、銀行のシステムをまるごとハッキングできない限りどうしようもあるまい。
 騙された所で話の種にはなるだろう…と思っていたら、待ち合わせの相手が現れた。いつも遅刻の常習犯が珍しい事だ。
 だが後で判ったことだが、やはりそいつは遅れて来ていた。それも一時間。
 ところが俺にその間の記憶はなかった。そう、契約は成立し、俺にとって“待機するだけに費やされる余剰時間”が買い取られたのである。

 以来、いかなる場合も俺は『待つ』ことがなくなった。
 公共交通機関を利用する場合はもとより、新発売の限定アイテムを買うための長蛇の行列も、カップラーメンでさえも『待たされる』ことに一切縁がなくなった。
 俺が駅に行くと必ず都合良く電車やバスが待っている。薄気味悪いほどだ。
 とはいえ、元々せっかちな俺には不自由さより有り難みの方が勝っていた。ただ、たまにテレビで気に入った帯番組があると、CM跳ばしどころか、一話終わる毎にもう次の回が始まるのには閉口したが。

 そして指定した銀行には毎月、暮らすのに充分すぎる程の額が振り込まれていた。過度な贅沢をしなければ、もう働く必要などないのだ。
 それでますます俺はヒマになったはずだったが、例の契約のおかげでヒマなど感じるヒマがなかった。

 金も溜まりに溜まる。質素を旨としているわけではないし、ましてストイックな性格でもなんでもないが、元々ジャンクフードと清涼飲料水で成人した世代だ。解りやすい大ざっぱな味が付いていて腹さえ膨れれば構わない。しかも俺の場合は人間の三大欲求のうち最大の枷であるはずの、例の快楽にもほとんど執着や興味もはなかった。

 収集癖や浪費癖もないから使う事がない。使わなければ貯まる。単純な道理だ。ヒマ潰しをする必要がないだけでなく、ヒマは発生と同時に金に換わる。
 もちろん、金を増やしたいとも思わなかった。
 使いもしない金を増やして喜ぶなんて、シミュレーションRPGの金儲けジョブよりまだ虚しい。ただし。

 その後の残りの俺の人生は、まさにあっという間だった。それはもう恐ろしいほどに。
「やっぱり…俺は魔物と契約したんだろうなあ…」

 俺にとってはつい数年前の事を思い出しつつ、鏡の中の老人となった俺につぶやいた。
 解約を考えなかった訳ではない。だが例のサイトはどうやっても見つけられず、有り余る金で専門家を雇っても口座の振込み主は特定できなかった。

 なんだかこうして生きるのも面倒だな、と思った途端、俺は意識を失った。朦朧としてゆく意識の中で声を聴いた。例の、懐かしくも艶やかな声だった。
「失礼ながらわたくしどもはその真逆の存在の委託を受けて運用しておりますので、絶対の信頼を置いて下さって大丈夫でございます。」

 待つ行為が消えると無駄は無くなるが、随分味気ないのも確かだ。
 俺はカップ麺がふやけるのを待つ時間がけっこう好きだった。
 そんな想いにふける間もなく、俺はさっさと土に還った。それを待つ時間さえ金に代わっていた。


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───おわり───

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